民事信託について(その2)

民事信託はいくつかの利点があります。その中でも大きなものは受益者連続型信託です。  
相続対策として有効でかつ簡単なものに「遺言」という制度があります。遺留分減殺請求を考慮しておけば、きわめて強烈かつ効果的な手段です。遺言に書いてあればほぼ絶対的に決まります。
※遺留分減殺請求➡遺言にいかなる記載があろうと法定相続人には法定相続分の1/2を請求できる権利がある。

しかし遺言にも大きな欠点があります。それは「遺言は一代限り」ということです。遺言者は自分の財産を妻でも息子でも果ては愛人にでも与えることはできます。
しかしその先は何もできません。すなわち例えば妻に与えた後妻が死亡したら、その財産をだれに帰属させるかまでは遺言できないのです。つまり妻が相続した財産の処分は妻に決定権があり、遺言ではどうすることもできません。

ところが民事信託ならそれができるのです。後継ぎ遺贈型信託だと何代もあとのものに遺産承継が可能となります。(尤も30年が限度ですが)例で説明しょう。
資産家の甲野太郎には内縁の妻他山丙子がおり、生活能力がないので彼女が生きている間は太郎の財産を使わせてあげたい。しかし丙子が死亡したら財産を長男の甲野乙男に渡したい。遺言だとこのような財産承継はできません。そこで信託を使います。

委託者兼第一受益者:甲野太郎、 受託者兼第三受益者:長男甲野乙男
第二受益者:太郎の内縁の妻他山丙子

①甲野太郎は自分名義の財産を甲野乙男と信託契約を結び自分が第一次受益者となる。
②甲野乙男は受託者となり、甲野太郎名義の財産を甲野乙男名義とし、管理運営してゆく。
③甲野太郎が死亡すると、甲野太郎の受益権は消滅し、内縁の妻他山丙子が第2受益権者になる。
④甲野乙男はそれ以降は他山丙子に利益を給付してゆく。
⑤丙子が死亡すると丙子の受益権は消滅し、甲野乙男が第3受益者となる。
⑥信託終了事由を他山丙子の死亡とし、残余財産の帰属権利者を乙男に定めておけば、当初の委託者から長男が財産を承継することができる。
⑦遺留分侵害の減殺請求は第一受益者の死亡により、第二受益者に行くが、第二受益者の死亡により、第三受益者は第一受益者から受益権を新たに取得したものとなる故、減殺請求の対象外になるため遺留分侵害には当たらないのです。

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【公認会計士・税理士】早稲田大学第一商学部卒業。 有限責任監査法人トーマツ退社後、清新監査法人を設立、代表社員として従事(平成15年退任)。 税理士としては、トーマツ退社後、共同事務所経営を経て、串田会計事務所を設立。平成28年に税理士法人化、令和元年に社名を令和税理士法人に変更。現在に至る。 事務所開業以来40余年、個人のお客様及び中小企業から上場企業まで関与。 他に令和アドバイザリー株式会社の代表取締役を兼務。 趣味は、剣道(7段)、長唄、観相、囲碁等多数。