相続税・贈与税一体化の行方

暦年課税の利用状況

暦年課税は1月1日から12月31までの一年間の財産の贈与が110万円を超える場合、贈与税が課税される制度です。110万円は必ずしも大きい金額ではありませんが、極めて広く利用されています。
平成30年度の統計によれば、暦年課税で申告された贈与財産は1兆5000億円で、このうち700万円以下のもの(限界税率10~20%)が92%を占めています。

相続時精算課税制度の利用状況

相続時精算課税制度とは、2500万円までの贈与は無税で、これを超えた金額については20%の課税をし、相続発生時にこの分も相続財産に加算して計算しなおし精算するという制度です。
この制度はいったん採用すると暦年課税は使えなくなってしまうという欠点があり、使い勝手が悪く、あまり利用されていません。

贈与税の一体化

暦年課税は相続前3年間の贈与は相続財産に取り込まれてしまいますが、長期間にわたり財産を小分けに贈与すれば相続のみで全財産を移転するより税負担を減少させられます。
現在個人金融資産約1700兆円のうち、60歳代以上がその60%約1000兆円を保有しています。
現在の日本には、高齢者が保有する資産を若い世代に如何に早期に移転させるかという重要なテーマがあります。
これが実現すれば、経済の活性化も期待できます。 そこで令和3年度の税再改正大綱では、暦年課税と相続時精算課税のあり方の見直しなど本格的な検討を進めることが示されました。
令和4年度の税制大綱では、具合的な改正案は示されず、前年度と同様「本格的な検討を進める」という表現にとどまりました。
しかし見直しの姿勢に変わりはないことがうかがわれます。 日本税理士会連合会の先ごろ取りまとめた令和3年度諮問事項では、「現行の相続時精算課税制度を基礎として、贈与税制を検討することが適当である。」としています

いずれにせよ今年度の税制改正では贈与税の改正が実現しそうですので(大体納税者が不利になるよう改正される傾向にありますので)以前にも書きましたが、今のうちに暦年贈与をしっかり利用しておきたいと思います。

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【公認会計士・税理士】早稲田大学第一商学部卒業。 有限責任監査法人トーマツ退社後、清新監査法人を設立、代表社員として従事(平成15年退任)。 税理士としては、トーマツ退社後、共同事務所経営を経て、串田会計事務所を設立。平成28年に税理士法人化、令和元年に社名を令和税理士法人に変更。現在に至る。 事務所開業以来40余年、個人のお客様及び中小企業から上場企業まで関与。 他に令和アドバイザリー株式会社の代表取締役を兼務。 趣味は、剣道(7段)、長唄、観相、囲碁等多数。