ついに抜いた伝家の宝刀

当ブログの3月17日付で「行き過きすぎた節税の行方は?」という題で記事を書きましたが、その答えが4月19日に最高裁から出ました。この問題はあちこちで取りざたされたので、皆さんはご存知かとも思いましたが、一応の答えを記しておくべきと考え少々遅くなりましたが、あえて書きました。
いわゆるタワーマンションの評価を評価通達でしたところ時価との差が大きすぎたので、国税局が否認した案件です。概要は以下の通り。
2件で13億8700万円(借金は10億5500万円)で購入した物件を、財産通達評価3億4000万円弱として相続税申告。借金が大きい故相続税は0円。相続開始後に1物件を売却している。
これを国税局は計12億7300万円とし更正処分した。上記売却物件の実勢価格は国税局の評価額と大差ない。従って国税局の評価額は実勢価格に近いといえる。

最高裁によれば
「評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが、実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、合理的な理由があると認められるから、当該財産の価額を財産評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが平等原則に違反するものではない」、と判断されました。

そこで最高裁の言うこの恐ろしい評価通達6の発動条件とは、

(1)評価通達に定められた評価方法を形式的に適用することの合理性が欠如していること。
(2)評価通達に定められた評価方法のほかに他の合理的な方法が存在すること。
(3)評価通達に定められた評価方法による評価額と、他の合理的な評価方法による評価額との間に著しい乖離(かいり)が存在すること。
(4)上記(3)の著しい乖離が生じたことにつき、納税者側の行為(作為)が介在していること。

この4条件を満たすものについては通達6を適用することに一定の限度で最高裁がお墨付けを与えたといえそうです。
尤もこの4条件には、まだはっきりしない要素があります。例えば通達評価と鑑定評価の乖離の度合い、税負担の不公平が認定される判断基準など、実務上注意すべき検討課題はまだまだ残ります。
とはいえ国側が勝ったということは、過度の節税はやらぬに越したことはなさそうです。

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【公認会計士・税理士】早稲田大学第一商学部卒業。 有限責任監査法人トーマツ退社後、清新監査法人を設立、代表社員として従事(平成15年退任)。 税理士としては、トーマツ退社後、共同事務所経営を経て、串田会計事務所を設立。平成28年に税理士法人化、令和元年に社名を令和税理士法人に変更。現在に至る。 事務所開業以来40余年、個人のお客様及び中小企業から上場企業まで関与。 他に令和アドバイザリー株式会社の代表取締役を兼務。 趣味は、剣道(7段)、長唄、観相、囲碁等多数。