元気なうちに早めの相続対策を。

相続対策をどうすべきか?とよく聞かれますが、その際3つのことを申し上げております。

(1)争族にならないこと。
(私が相談された相続案件の中で、70%が大なり小なり争族になっております)
(2)納税資金の確保(相続財産の大半が土地建物等の不動産である場合、算出された税金を納める現預金がなく困ってしまった例も多く発生します)
(3)節税対策(少しでも税金を減らす必要があります。)

と、ここいら辺は当ブログでも過去に書きました。

上記の3つの対策のうち、認知症になった場合は、何もできなくなります。
すなわち、認知症になると、自分の判断で財産を処分することができなくなります。
そこで、万が一の備えとして、民事信託、成年後見、生前贈与の3つの制度を頭に入れておいてください。

民事信託を利用すると、財産を管理してくれる人(受託者)と本人(委託者)が、信託契約を結ぶことにより、財産を受託者に移転し、その管理や運用を受託者に任せることができます。このメリットは、認知症などにより、委託者の判断能力が衰えてしまっても受託者が財産の処分などをできることにあります。

成年後見人制度は、法定後見人制度と、任意後見人制度という2つの種類があります。この制度が民事信託と異なる点は、財産管理だけでなく、身上監護まで仕事に含まれることです。「身上監護」とは、施設の入所契約の締結や、介護サービスの締結などの、法律行為を行うことを指します。

生前贈与とは、皆さんよくご存じの、暦年贈与(一年間に受け取った財産の合計額が110万円を超えた場合、その超えた分に対して贈与税が課税されます。)と相続時精算課税制度(受け取った財産が2500万円を超えるまでは贈与税は課税されない制度で、相続発生時に精算されます。)があります。
この相続時精算課税制度を選択した後は、暦年課税制度は選択できなくなります。

生前対策の選択肢は色々あります。そしてそれぞれの制度をカバーする範囲や役割もさまざまあります。しかし認知症を発症してしまうと意思能力のない人と扱われる可能性があり、相続対策は利用できなくなります。なるべく元気なうちに対策を検討しておくべきでしょう。

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【公認会計士・税理士】早稲田大学第一商学部卒業。 有限責任監査法人トーマツ退社後、清新監査法人を設立、代表社員として従事(平成15年退任)。 税理士としては、トーマツ退社後、共同事務所経営を経て、串田会計事務所を設立。平成28年に税理士法人化、令和元年に社名を令和税理士法人に変更。現在に至る。 事務所開業以来40余年、個人のお客様及び中小企業から上場企業まで関与。 他に令和アドバイザリー株式会社の代表取締役を兼務。 趣味は、剣道(7段)、長唄、観相、囲碁等多数。