未成年者に贈与する場合に要注意

未成年者に贈与することはよくあることですが、注意すべきことをお知らせします。

令和3年9月17日の国税不服審判所の裁決事例です。
被相続人(死亡した人)Aが、Aの嫡出子(法律上の子)でないB子に対し、毎年一定の金額をB子の唯一の法定代理人である母Cを介してB子名義の普通預金口座に10年間入金し続けていました。
AはBに対して毎年一定額を贈与する旨の贈与証を作成しましたが、B子や母Cの署名押印はありませんでした。贈与証には「私は平成30年より以後毎年8月中に下記の者(B子)に金〇〇円を贈与する。但し贈与額が変動した場合は、この金額を見直す。」と記載されていました。

国税不服審判所は『B子の母Cは本件被相続人Aの指示に基づきB子口座に入金を行っていた。B子の名義の預金の通帳をB子に渡す際には、「この金はAがBのために積み立てていた金である」旨を説明していた。
本件贈与証の内容は、その理解が特別困難なものとはいえず、また母Cは関連法人の経理担当として勤務していたことを考え合わせると、本件贈与証の具体的な内容を理解していたとみるべきであり、そのことを前提とすると、母CがAの預金口座からB子の預金口座への資金の移動については、AからB子への贈与によるものであると認識していたものと認めるのが相当である。』 として、この贈与は認められました。

しかし税務署からは贈与が否定されました。否認された理由はやはり贈与証に受贈者のB子及び受贈者の法定代理人Cの署名押印がないという点です。
これがなくとも結果的には贈与は認められましたが、納税者には審査請求をする苦労が増え、名義預金と認定されるリスクが生じるというディメリットが発生しました。
従って未成年者への贈与は、未成年者の法定代理人の署名押印のある贈与契約書が重要であることがわかります。
なお本件では法定代理人は母Cだけでしたが、法律上両親がいる場合は両親の署名押印が必要となります。

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【公認会計士・税理士】早稲田大学第一商学部卒業。 有限責任監査法人トーマツ退社後、清新監査法人を設立、代表社員として従事(平成15年退任)。 税理士としては、トーマツ退社後、共同事務所経営を経て、串田会計事務所を設立。平成28年に税理士法人化、令和元年に社名を令和税理士法人に変更。現在に至る。 事務所開業以来40余年、個人のお客様及び中小企業から上場企業まで関与。 他に令和アドバイザリー株式会社の代表取締役を兼務。 趣味は、剣道(7段)、長唄、観相、囲碁等多数。