贈与税の時効

贈与税の時効―――公正証書で贈与契約書を作成したが、贈与税の時効が認められなかった例

Aさんは昭和60年(1985年)3月に土地と建物につき息子B男に贈与しました。公正証書にて贈与契約書を作成し、物件を引き渡しました。しかし贈与税の申告と登記はしませんでした。
贈与登記を行ったのは、贈与契約から8年後の平成5年(1993年)12月でした。この時点で贈与税の時効を過ぎていました。

税務署から贈与税の指摘をうけたA、B親子は、「贈与税による財産の取得は、書面によるものについてはその効力発生時、書面によらないものについてはその履行時」であることを引き合いに出し、「公正証書」は信用があり、書面による贈与であるからこの土地建物は、昭和60年の贈与に当たる。と主張しました。
一方税務署は「昭和60年ではなく登記日である平成5年12月であって、時効にはならない。」と主張しました。

判決は、「本件公正証書は贈与税の負担がかからないようにするためにのみ作成されたものであり、従って本件公正証書(昭和60年)に贈与がなされたものではない。そうすると本件不動産を贈与したのは、書面によらない贈与ということになり、その場合はその履行時(平成5年)に贈与による財産取得があったと見るべきである。」ということで、税務署側の勝訴となりました。
このように、贈与の時効について素人考えで行うことは危険ですので、十分注意して下さい。

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【公認会計士・税理士】早稲田大学第一商学部卒業。 有限責任監査法人トーマツ退社後、清新監査法人を設立、代表社員として従事(平成15年退任)。 税理士としては、トーマツ退社後、共同事務所経営を経て、串田会計事務所を設立。平成28年に税理士法人化、令和元年に社名を令和税理士法人に変更。現在に至る。 事務所開業以来40余年、個人のお客様及び中小企業から上場企業まで関与。 他に令和アドバイザリー株式会社の代表取締役を兼務。 趣味は、剣道(7段)、長唄、観相、囲碁等多数。