相続財産の使途不明金

相続財産のうちの預金の一部が生前に引き出されていた場合であっても、この引き出されたお金が被相続人自身のために使われたのであれば、これは相続財産ではなく、遺産分割の対象には含まれません。
しかし使途不明金がある場合は、相続人など、被相続人以外の人が勝手に引き出して使った可能性があります。これは不法行為となりますので、もし被相続人が生前にそれを知ったときは不当利得としてその返還を求めることができます。あるいは預金を勝手に下した相続人に対して、損害賠償請求ができます。
その預金の持ち主である被相続人が亡くなっている場合には、他の相続人が返還を請求できることになります。しかし第三者が預金を勝手に下したということを立証することはなかなか困難なので、弁護士、税理士等の専門家に依頼する方が良いと思います。

税務署もこの使途不明金には大いに興味があり、額が多ければ多いほど何のために使われたのかを追及されます。使途が証明されずに使途不明金とみなされれば相続税の修正申告を求められ、過少申告加算税、延滞税等のペナルティーがかかります。場合によってはみなし贈与として贈与税が加算される可能性も否定できません。

こうした意味から税務調査等で、被相続人が亡くなる3年から5年前の預金通帳は必ずと言ってよいほどチェックされますので、十分中身を調べておいてください。

相続が開始する前にできるだけ使途不明金が発生しないよう、信頼できる人に資金の管理を任せる、一人に任せるのでなく全員で情報を共有しておくなどの工夫が必要です。

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【公認会計士・税理士】早稲田大学第一商学部卒業。 有限責任監査法人トーマツ退社後、清新監査法人を設立、代表社員として従事(平成15年退任)。 税理士としては、トーマツ退社後、共同事務所経営を経て、串田会計事務所を設立。平成28年に税理士法人化、令和元年に社名を令和税理士法人に変更。現在に至る。 事務所開業以来40余年、個人のお客様及び中小企業から上場企業まで関与。 他に令和アドバイザリー株式会社の代表取締役を兼務。 趣味は、剣道(7段)、長唄、観相、囲碁等多数。