生前贈与をする際に注意しておくこと

相続税を少しでも減らす手段の一つとして生前贈与があります。生前贈与をする際に忘れてはならないのは、遺言書を残しておくことです。
遺言書を残さずに亡くなってしまった場合、原則として遺産分割協議が必要になります。遺産分割を遺族で話し合っている際、ほかの相続人から「お兄ちゃんだけが生前贈与を受けてずるい。」などと言って、生前贈与分を相続財産に加算するよう求めてくることがあります。これを「特別受益の持ち戻し」と呼びます。

特別受益とは、一部の相続人の受けた生前贈与や、遺贈(遺言によって財産を無償で譲ること)などの利益を言います。
特別受益のもち戻しが主張されると、例えば経営者が自社株式を長い年月をかけ長男に譲渡し続けていたとしても、相続時に自社株も含めて遺産分割協議をせねばならず、自社株が他の相続人に分散してしまう恐れもあります。
こうした事態を防ぐのが遺言書です。遺言書で特別受益を遺産に加えないことを書いておけば、遺産分割の際に特別受益の持ち戻しはできません。

但し遺言書を残したからと言ってすべたが解決するわけではありません。法律では「遺留分」といって、一定の相続人には最低限の財産分与を主張する権利が認められています。しかし遺留分として請求できる財産の割合は法定相続分より少なくなっております。例えば相続人が2人の子供だった場合は、法定相続分はそれぞれ2分の1ですが、遺留分は4分の1となります。
また遺留分を請求することができる期間は、相続を知った時から1年間と限定されています。相続から10年経過したら、それ以後に知ったとしても、時効により消滅されます。

以上から生前贈与をするときは、相続時に起こりうるリスクを考慮して行うことが大事です。

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【公認会計士・税理士】早稲田大学第一商学部卒業。 有限責任監査法人トーマツ退社後、清新監査法人を設立、代表社員として従事(平成15年退任)。 税理士としては、トーマツ退社後、共同事務所経営を経て、串田会計事務所を設立。平成28年に税理士法人化、令和元年に社名を令和税理士法人に変更。現在に至る。 事務所開業以来40余年、個人のお客様及び中小企業から上場企業まで関与。 他に令和アドバイザリー株式会社の代表取締役を兼務。 趣味は、剣道(7段)、長唄、観相、囲碁等多数。