遺贈寄付について

法定相続人がいない人の財産は、ほっておくと国のものになってしまいます。
遺贈寄付とはあまり聞きなれない言葉ですが、社会に貢献したいという人が利用する制度と言えます。
遺贈寄付には次の三種類のものがあります。

(1)遺言による寄付……民間非営利団体(学校や公益法人等)に寄付することを遺言に残す。
(2)相続人による相続財産からの寄付……エンディングノート等で遺族に伝える。
(3)信託による寄付……個人と信託契約した受託者が、民間非営利団体に寄付する。
この遺贈寄付については、現実に行う人は今のところほとんどいません。

即ち、子供も配偶者もいない人が、自分の人生の集大成としての社会貢献をしようとする人は増えてはきましたが、まだまだ少ないのが現実です。欧米では寄付が文化の一種として定着しています(例、ノーベル賞など)。我が国も今後の増加を期待したいものです。

遺贈寄付には現金による遺贈と現物による遺贈が考えられますが、税金面では相続税と所得税につき検討しておく必要があります。

(1)遺言による寄付→ 遺言に基づく財産の提供は、その財産は遺言の効果が生じたときから法人に帰属したものとみなされ、相続人に課税問題は発生しません。
(2)相続財産の寄付→ その財産はいったん被相続人から相続人に相続され、その後相続人から法人に寄付されると考えるので、原則として相続人に相続税の課税が発生します。

次に現金寄付と現物寄付の関係。(寄付した側にかかる税金)
(1)現金による寄付→ 所得税の課税問題が発生することはありません。
(2)現物の寄付→ その現物寄付が、不動産、株式等の場合で、含み益がある場合には、みなし譲渡課税の適用を受け、所得税の課税が発生することがあります。

問題はこの現物による寄付で、例えば2000万円で購入し、時価1億円になった不動産を寄付すると、差額の8000万円について寄付した人に所得税が課税されます。
遺言で財産を特定して遺贈寄付する場合、亡くなった人が払うべき税金は相続人が引き継ぐため、税金を負担するのは寄付を受けた公益法人でなく、相続人になってしまうのです。
こんな制度は日本だけで、寄付したうえ税金を払わされるなど、これでは相続人は到底納得がゆきません。しかし現在の制度はこんな変なことになっています。
これを回避する手段もないこともないのですが、寄付はできることなら現金ですることをお勧めいたします。

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【公認会計士・税理士】早稲田大学第一商学部卒業。 有限責任監査法人トーマツ退社後、清新監査法人を設立、代表社員として従事(平成15年退任)。 税理士としては、トーマツ退社後、共同事務所経営を経て、串田会計事務所を設立。平成28年に税理士法人化、令和元年に社名を令和税理士法人に変更。現在に至る。 事務所開業以来40余年、個人のお客様及び中小企業から上場企業まで関与。 他に令和アドバイザリー株式会社の代表取締役を兼務。 趣味は、剣道(7段)、長唄、観相、囲碁等多数。