特別受益について

遺産分割において一般的に忘れられているのが特別受益です。今回は特別受益について考えてみました。

(1)特別受益とは

共同相続人の中に被相続人が遺贈及び一定の生前贈与を受けた者がいる場合は、遺産の総額にこれを加えたものを遺産とみなし、各相続人に一応の相続分を算定し分割対象としています。これを「特別受益の持戻し」と呼んでおります。なお特別受益が一応の相続分を超過する場合は、超過分を返還する必要はないとされています。

(2)特別受益の範囲

特別受益として持戻しの対象となる財産は「遺贈」または「婚姻、養子縁組のための贈与」若しくは「生計の資本としての贈与」です。
遺贈についてはその目的にかかわりなく、すべて持戻しの対象となります。
婚姻、養子縁組のための贈与の具体例は持参金、嫁入り道具、結納等がはいりますが、挙式費用は含まれません。
生計の資本としての贈与は、生計の基礎として役立つ贈与一切が含まれますので、かなり広いものになります。教育費も他の相続人に比し特別多ければ対象になります。

(3)特別受益者の範囲

特別受益者となるのは共同相続人に限られます。代襲相続人は相続人となった後の受益は持戻し義務を負いますが、相続人となる前の受益については持戻し義務を負わないとする見解が通説でしたが、近時は負うとの見解も有力です。

(4)評価の時期

特別受益額を評価する時点は相続開始時で、過去にされた贈与も相続開始時の評価額で算定されますが、現実に遺産を分割するにあたっての遺産自体の評価については、遺産分割時が基準とされています。

(5)持戻しの免除

被相続人が持戻しの意思表示をすれば、持戻しは不要となります。また婚姻期間が20年以上の夫婦の一方が他の一方に対して居住用不動産の遺贈または贈与をした場合は、持戻し免除の意思表示があったとみなされます。

このように特別受益については色々ありますが、あまり古いものまで引っ張り出すと、遺産分割の協議が紛糾しますので、どうぞほどほどに。

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【公認会計士・税理士】早稲田大学第一商学部卒業。 有限責任監査法人トーマツ退社後、清新監査法人を設立、代表社員として従事(平成15年退任)。 税理士としては、トーマツ退社後、共同事務所経営を経て、串田会計事務所を設立。平成28年に税理士法人化、令和元年に社名を令和税理士法人に変更。現在に至る。 事務所開業以来40余年、個人のお客様及び中小企業から上場企業まで関与。 他に令和アドバイザリー株式会社の代表取締役を兼務。 趣味は、剣道(7段)、長唄、観相、囲碁等多数。