死後の離婚届 姻族関係終了届

姻族関係終了届は、亡くなった配偶者の親族(配偶者の両親や、兄弟姉妹など)との関係を絶つための手続きです。提出できる人は亡くなった人の配偶者で、届出用紙は本籍地、又は住所地の各市区町村で入手でき、自治体によっては、ダウンロードできるところもあります。
ただ、生前の離婚手続きとは違い、配偶者が死亡した後の手続きとなるため、籍を抜く事はできません。あくまでも配偶者の親族との関係を終了させる為の手続きとなります。

では、どのような場合にこの手続きを考えるのでしょうか。

例えば、夫が亡くなり、その両親の介護を妻が一人で行う事になったとします。
しかし、妻が献身的に義理の親を介護しても、養子縁組の関係にない限り、妻は義理の親の相続人にはなれません。2019年7月に相続人でない親族が無償で家事・介護などを行っていた場合、その役務の対価として特別寄与料というものを請求できるようになりましたが、要件も多いうえ、他の相続人との協議が原則となるため、これも十分な見返りが約束されているとは言えません。

このように妻が姑や舅の世話をしても、将来的な見返りが確保できない場合、この届出を検討する事が考えられます。

では、提出した場合のメリットとデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
まず、メリットは以下の5つが考えられます。

・ 生前の離婚とは違い、戸籍上の婚姻関係は変わらない為、遺産を相続できる。
・ 受給要件を満たしていれば、遺族年金を受給できる。
・ 状況によっては発生する、配偶者の親族の扶養義務・介護義務が無くなる。
・ 死亡した配偶者の祭祀継承者を他の親族に引き継いでもらう事ができる。
・ 不仲の親族との関係を絶つことができる。

最大のメリットは、遺産の相続権や遺族年金の受給権がありながら、相手の親族との関係を解消できる事でしょう。また、お墓などの祭祀財産の管理なども他の親族にお願いする事になり、仲の悪い親族がいれば、そのストレスからも解消される事になります。

デメリットは、配偶者の親族との関係は完全に断たれる可能性があるという事です。金銭的な理由で頼る事もできなくなり、忙しい時や緊急時に子供の世話をお願いする事も難しくなるかもしれません。

なお、届出を提出した後でも、子供から見た義理の父母や伯父伯母との関係は保たれます。よって、義理の父母が亡くなった時、子供は代襲相続で遺産を相続できます。しかしながら、両家の関係が悪化していると、相続が争族に発展する事もあるため、その事を踏まえた上で届出を提出するかどうか検討する必要があります。

最後になりますが、この届出を一度提出すると、婚姻関係を元に戻す事はできません。
提出する際は、メリットとデメリットをよく考慮し、後悔のない選択をしましょう。

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【公認会計士・税理士】早稲田大学第一商学部卒業。 有限責任監査法人トーマツ退社後、清新監査法人を設立、代表社員として従事(平成15年退任)。 税理士としては、トーマツ退社後、共同事務所経営を経て、串田会計事務所を設立。平成28年に税理士法人化、令和元年に社名を令和税理士法人に変更。現在に至る。 事務所開業以来40余年、個人のお客様及び中小企業から上場企業まで関与。 他に令和アドバイザリー株式会社の代表取締役を兼務。 趣味は、剣道(7段)、長唄、観相、囲碁等多数。