マンションの評価方法の見直しについて
マンションは実勢価格よりも相続税評価額が大きく下がる傾向にあります。
そのため、相続対策としてマンションを購入する事が一つの手とされていました。
※ 実勢価格とは、実際の取引が成立する時の価額です。
では何故、評価額が下がるのでしょうか?
例えば、1,000㎡の土地に10階建て・100室のマンションがあったとします。
部屋の広さが全て同じだとすれば、1室あたりの敷地所有面積は10㎡になります。
一軒家とは違い、マンションですと10㎡の敷地評価で済むわけです。
20階建て以上のタワーマンションが節税対策として有名なのも、総戸数が多く1室あたりの敷地所有面積が極端に小さくなる事が要因です。
国税庁が発表した資料によると、約65%が実勢価格の半額以下の評価になっていたそうです。
結果的に実勢価格と評価額との差が大きく乖離している事を考慮し、令和5年6月22日に行われた有識者会議で、評価方法の見直しが検討されました。その見直し案に基づいた改正案が、パブリック・コメントのサイトに掲載されており、令和6年1月1日以後に発生した相続・遺贈、または贈与から適用される予定です。(令和5年9月11日現在)
なお、評価方法は以下のような手順で行われる見通しです。
(まだ未確定のため、細かい計算式は省略いたします)
1. 自用地・自用家屋としての価額を算定します。(現行の基本通達による評価方法)
2. 評価乖離率(現行の評価方法と実勢価格との差の割合)を算定します。
3. 評価水準を算定します。(1÷評価乖離率)を算定します。
4. 最後に1から3の数字を使用して、相続税評価額を算定します。
【相続税評価額】
・評価水準が60%未満の場合 → 自用地・自用家屋としての価額×評価乖離率×60%
・評価水準が60%以上100%未満 → 自用地・自用家屋としての価額
・評価水準が100%以上の場合 → 自用地・自用家屋としての価額×評価乖離率
例) 東京都内 築 10 年 40階 建て 所在階 25 階 販売価格 1億円
1. 自用地・自用家屋としての価額 → 4,000万円
2. 評価乖離率 → 1億円 ÷ 4,000万円 = 2.5 ※
3. 評価水準 → 1 ÷ 2.5 = 0.4(40%)
4. 相続税評価額 → 4,000万円 × 2.5 × 0.6 = 6,000万円
※ 評価乖離率は、実勢価格がわからないと計算できないため、築年数や総階数・敷地面積などを用いた計算式が用意されています。(パブリック・コメントのサイトに掲載されています)
この評価方法が採用されると、少なくとも実勢価格の60%の評価額になります。
ただ、それでも40%の評価減は可能ですので、節税効果が全くないわけではありません。
まだ見込みの段階ですので何とも言えませんが、今後はマンション節税以外の対策もしっかりと検討する必要がありそうです。