親の土地を無権代理で売買契約をし、土地の引渡し前に親が亡くなった場合

今回は事例をご紹介します。

「病気により意思の確認が困難な状態にある親が所有する土地を、子が無権代理で売買契約をした直後、親が亡くなり相続が発生しました。この時親の土地は買主に引き渡す前で売買代金も未収でした。」
 この場合相続財産となるのは土地か、はたまた売買代金請求権でしょうか?

※無権代理行為とは、代理権がない人が頼みもしないのに、勝手に本人を代理して行動を起こすことを言います。効果としては原則として本人に効果は生じません。例外として本人が代理人若しくは相手方に追認すれば契約の時から有効な代理であったことになります。

※追認とは、取り消しうる行為をもう取り消されたものとして、契約を確定的に有効なものとすることです。

国税不服審判所の判断は、

被相続人の無権代理人として締結した売買契約について、被相続人の死亡後買主との間で交わした「売り主の地位を被相続人から承継したとする」覚書で追認したものと認められ、追認は別段の意思表示がない時は、契約の時にさかのぼってその効力を生ずることになるから、売買契約は、被相続人がなくなる前の無権代理で契約が行われた日にさかのぼて有効であった、と認定されました。

結論
上記の文章は甚だわかりにくいので、結論を書きますと、
相続税の課税価格に算入すべき財産は、土地等ではなく売買代金請求権であるのが相当である、ということになりました。
土地でしたら相続税の評価で行けるのですが、売買代金では値上がり益も入っており、大分割高なってしまいます。このような状態にならぬよう気を付けて下さい。

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【公認会計士・税理士】早稲田大学第一商学部卒業。 有限責任監査法人トーマツ退社後、清新監査法人を設立、代表社員として従事(平成15年退任)。 税理士としては、トーマツ退社後、共同事務所経営を経て、串田会計事務所を設立。平成28年に税理士法人化、令和元年に社名を令和税理士法人に変更。現在に至る。 事務所開業以来40余年、個人のお客様及び中小企業から上場企業まで関与。 他に令和アドバイザリー株式会社の代表取締役を兼務。 趣味は、剣道(7段)、長唄、観相、囲碁等多数。