未分割は避けましょう。

人が亡くなるとその人(被相続人)の所有していた財産は、相続人等に引き継がれますが、
相続人が複数の場合はその財産は共有になります。
これを相続人全員で分割協議を行いますが、相続人の間でその分割が決まらない場合は、その財産は未分割財産となります。
相続税の申告期限(死亡後10か月以内)までに財産分割が成立しない場合は、共同相続人または包括受遺者(*)が、民法の規定による相続分または包括遺贈の割合に従って財産を取得したものと仮定して課税価格の計算をし、その結果に基づいて申告と納税をします。
つまりとりあえず仮計算して全体の相続税額を算出して、納めさせてしまおうというのです。
そして分割協議が合意され各相続人の取り分が確定した段階で、当初の法定相続分より多い相続人は修正申告をし、少ない相続人は更正の請求をして税金を調整します。

*包括受遺者とは被相続人から「割合的に」「遺贈」を受けた人をいいます。
遺贈とは、遺言による贈与を言います。即ち被相続人が誰かに対して遺産を譲り渡す旨を遺言書に記載していれば、それが遺贈ということになります。
この遺贈を受ける人のことを「受遺者」と呼んでいます。

と、ここまではそれほど問題ではないように思われますが、この未分割の期間が長びき、3年を過ぎますとエラク不利な状況になりますので要注意です。以下に掲げる諸特例が受けられなくなるのです。その主なものを列挙すると次の通りとなります。

①配偶者に対する相続税額の軽減
②小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
③特定計画山林についての相続税の課税価格の計算の特例
④特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例
⑤農地等についての相続税の納税猶予及び免除等
⑥山林についての相続税の納税猶予及び免除
⑦特定の美術品についての相続税の納税猶予及び免除
⑧個人事業者の事業用資産についての相続税の納税猶予及び免除
⑨非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除
⑩医療法人の持分についての相続税の納税猶予及び免除

以上の特例が受けられなくなってしまうのです。特に納税猶予制度は法定申告期限後に遺産分割が確定したとしても適用できないことにご留意ください。
このように未分割だとすごく損をするので、可能な限り法定期限内に分割を済ませることをお勧めいたします。

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【公認会計士・税理士】早稲田大学第一商学部卒業。 有限責任監査法人トーマツ退社後、清新監査法人を設立、代表社員として従事(平成15年退任)。 税理士としては、トーマツ退社後、共同事務所経営を経て、串田会計事務所を設立。平成28年に税理士法人化、令和元年に社名を令和税理士法人に変更。現在に至る。 事務所開業以来40余年、個人のお客様及び中小企業から上場企業まで関与。 他に令和アドバイザリー株式会社の代表取締役を兼務。 趣味は、剣道(7段)、長唄、観相、囲碁等多数。