生前贈与の「相続時精算課税制度」と「暦年課税制度」の見直しについて (暦年課税制度が廃止?110万円の非課税枠がなくなる?)

現行は「相続時精算課税制度」と「暦年課税制度」の選択制です。
令和3年度の与党税制改正大綱で「相続税と贈与税の一体化を本格的に検討する」とありましたので
将来的に贈与税は「相続時精算課税制度」に一本化される等の改正が行われるかもしれません。
(令和3年12月24日の令和4年度与党税制改正大綱では、改正に至りませんでした)

その結果、110万円までの非課税枠を利用し、毎年少しずつ財産を移していく相続対策が行えなくなる
可能性があります。
今から墓地・仏具の生前購入や生命保険の非課税枠を利用する等、別の相続対策も検討しましょう。

【相続時精算課税制度】

贈与した方が亡くなった時に、贈与財産も相続財産と一括して計算し、まとめて相続税として納税する
方式です。
贈与財産が2,500万円までなら、贈与税を納めずに贈与を受ける事ができます。

贈与分は贈与した時の時価で計算される為、時価が高騰する可能性がある財産の場合は、節税になる事が
あります。
なお、贈与者ごとに選択できますが、いったん選択すると、選択した年以後、贈与者が亡くなるまで
「暦年課税制度」は利用できません。

【暦年課税制度】

毎年、1月1日から12月31日までの1年間(暦年)に贈与された財産の合計額に応じて税金を課税する
方式です。
財産の合計額が110万円以下であれば、贈与税がかかりません。

また、「暦年課税」の場合、相続前3年以内に行ったものであれば、相続財産に加算されます。
相続前3年以内の贈与税を支払っていれば、その分を相続税額から差し引く事になります。
なお、相続額税より支払った贈与税の金額が大きい場合、相続税は発生しませんが、払い過ぎている分
の贈与税の還付請求はできません。切り捨てとなります。

今後の見直しによっては、遡る期間は5年、10年、さらにもっと長い期間になるかもしれません。
また、経済対策として講じられている110万円までの非課税措置についても、令和4年度与党税制改正大綱において、【限度額の範囲内では家族内における資産の移転に対して、何ら税負担も求めない制度となっていることから、そのあり方について、格差の固定化防止等の観点を踏まえ、不断の見直しを行っていく必要がある】とありますので、非課税枠が今後も続くとは限りません。今からできる対策を検討しましょう。

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【公認会計士・税理士】早稲田大学第一商学部卒業。 有限責任監査法人トーマツ退社後、清新監査法人を設立、代表社員として従事(平成15年退任)。 税理士としては、トーマツ退社後、共同事務所経営を経て、串田会計事務所を設立。平成28年に税理士法人化、令和元年に社名を令和税理士法人に変更。現在に至る。 事務所開業以来40余年、個人のお客様及び中小企業から上場企業まで関与。 他に令和アドバイザリー株式会社の代表取締役を兼務。 趣味は、剣道(7段)、長唄、観相、囲碁等多数。