美術品を寄付するには

2/20付のブログに、遺贈寄付について書きましたが、それは「現物による寄付は、含み益(時価と取得費の差)がある場合は所得税を課税されます。寄付した上に所得税まで取られるのは全くひどい法律です。」といった内容でした。
但し寄付を受けた法人が、国または地方公共団体か公益法人であれば課税されません。

先日、美術品を相続された方が相談にいらっしゃいました。私もこの例は初めてなので、二人していろいろ勉強したのですが、公益法人に寄付する場合は、結構面倒なのに驚きました。
美術品を相続することはあまり多く発生しないので、改めて書くこともないと思ったのですが、もし自分にそんなことが起こったらと考え、あえて簡単にお知らせしようと思った次第です。
この公益法人等に寄付した場合は、租税特別措置法第40条の規定により、申請が認められれば非課税となります。具体的には承認申請書を作成し、所轄税務署長を通じて→国税局→国税庁とチェックされ、国税庁長官に提出する必要があります。
申請書自体は大して難しいことはありませんが、添付する資料が膨大なのです。戸籍謄本等からはじまり、寄付財産の時価を明らかにする書類その他第1表から第17表まであり、(中には該当してないものもあります)別に税理士としての専門知識が必要なものはなく、素人でも申請は可能です。
しかし中には受入れ法人の給与規定及び給与の内訳から、収支決算書、財産目録等受け入れ法人の内容が赤裸々にわかってしまうものもあり、公益法人の中には、これを嫌がり、受け入れを辞退する法人もあるとかいうことです。
またこの膨大な資料を寄付実行後4か月以内に、取り揃えて提出しなければ非課税となりません。これも結構プレッシャーとなります。尤も実務上は遅れてもその理由書を添付すれば申請書は受け入れられるとのことです。
とにかく、全く面倒くさい手続きですが、税金をゼロにするためには楽をさせてはくれないようです。

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【公認会計士・税理士】早稲田大学第一商学部卒業。 有限責任監査法人トーマツ退社後、清新監査法人を設立、代表社員として従事(平成15年退任)。 税理士としては、トーマツ退社後、共同事務所経営を経て、串田会計事務所を設立。平成28年に税理士法人化、令和元年に社名を令和税理士法人に変更。現在に至る。 事務所開業以来40余年、個人のお客様及び中小企業から上場企業まで関与。 他に令和アドバイザリー株式会社の代表取締役を兼務。 趣味は、剣道(7段)、長唄、観相、囲碁等多数。